インタビュー

第1回目は2度目の施設訪問となるふなつ一輝先生です。

藤沢とおる先生

2009年8月7日~8日にかけてビースマイルプロジェクトの活動の一環として、スマイルサポーターと長崎の情緒障害児短期治療施設を訪問してきました。同施設へは今回で訪問は3度目になります。

このコーナーではその訪問の様子などを中心にスマイルサポーターにインタビューしていきたいと思います。第1回目は2度目の施設訪問となるふなつ一輝先生です。

時折垣間見せる子ども達の素顔…

Q.まず、ふなつ先生の作品のについてお伺いしたいと思います。

今は集英社のヤングジャンプで「華麗なる食卓」を週間連載しています。今年で連載9年目になります。

Q.凄い長期連載ですね。1週間に何ページ位を描いているんですか?

えーと、1週間では18ページになります。

Q.週間連載となるとかなりお忙しいと思いますが、よろしければ1週間のスケジュール等を教えていただけますか?

スケジュールはですね、基本的にはほぼ毎日マンガを描いています。休みは週に1日取らせて頂いておりますが、それ以外の時間はずっとペンを握っている状態ですね。

Q.そのお忙しいスケジュールの合間を縫って今回、長崎の施設訪問をされたわけですけれども、そのきっかけを教えていただけますか?

今回の訪問のきっかけは、「虐待を受けた子ども達に私たち漫画家が何かできることはないのか?」と葉月先生にお声をかけて頂いたことです。声をかけて頂いた丁度その頃、子どもが事件に巻き込まれる悲しいニュースが多くて…。何かこう胸が詰まる思いをしていたんです。葉月先生から長崎の子ども達やボランティア活動のお話を聞いたとき、自分に何ができるか分からないですが、まずは実際に現場に足を運ぼうと…そう思い参加させて頂きました。

Q.週間連載の合間を縫って参加という体力的にもハードなスケジュールになりましたが、実際に施設を訪問してみていかがでしたか?

それがですね、仕事が終わって寝ずに長崎まで来て体力的にはキビシいはずなんですが、来てみると楽しいんですよね。子ども達が凄く人懐っこくて、ガンガンコミュニケーションを取って来るのですよ、そうなると僕の方も嬉しくなって…逆に僕の方が元気をもらっちゃいました(笑)訪問が終わってから、「ああ俺、仕事で疲れていたんだ!」って、それくらい楽しく子ども達には過ごさせてもらいました。(笑)

Q.逆に元気をもらったとお話されましたが、しかし実際、情短という施設には厳しい環境に置かれていた子ども達が多いです。それを感じたエピソードはありましたか?

ほんと凄く明るく笑顔で僕らを迎えてくれるので、一見そんな過酷な家庭環境に置かれていた様には見えないんですが、ふとしたところで違和感の様なものを感じました。

Q.違和感というと?

最初に施設の男の子に会った時、男の子が「マンガのひと?」って聞くわけですよ。「うん、そうだよ」って言うとその子はその場でバンザイをして抱っこしてという仕草をしたんです、よしよしと思って抱っこしたら、重いたいんですね。
あれ?と思って「年いくつ?」ってその子に聞いたら「11才」って答えたんですよ。11才くらいの男の子になるとあかの他人に対して抱っこってあまり言わないのじゃないかなって…。

Q.若干幼さを感じたということですか?

そう。逆に「抱っこ」という行為には照れを覚えるような年齢だと思うんです。他には一緒に遊んでいても中学3年生位で鬼ごっこをしたり…。そういう違和感の様なものを感じました。

Q.なるほど…。

あと、皆で遊んでいる時は明るく元気なんですが、喧騒から離れると「自分は施設を転々としていて…」とポツリポツリ話し始めるんですよね。その時僕はうんうんって聞いてあげる事しかできなかったんですけどね。大勢でいる時は明るく振舞っていても、いろいろな過去があって頑張っているんだなと…。

Q.実際に子ども達に会ってみて今後、施設の子ども達に何かしてあげたいなとか考えましたか?

そうですね。正直、僕自身に何ができるかは分からないんですが、遊びに行くことは出来ます。遊びに行って子ども達が喜んでくれるなら、可能な範囲で一緒に遊んで絵を描いて…現時点では「それでいいのかな?」と思っています。

Q.まずは子ども達に直接ふれあうことからスタートということですね。

はい。あまり大きな目標は掲げられませんが、せめて一緒に遊んでいる時位は、子ども達に楽しんでもらえたら嬉しいです。

Q.最後に今回施設の子ども達とふれあい、今後、ふなつ先生の作品に何らかの形で影響があると思いますか?

それはあると思います。もちろんこのままを作品に描く事は難しいと思うのですが、何らかの形で作品に取り込めたらなと思います。

Q.ふなつ先生の作品を読んでこういった子ども達に関心を持つ人が1人でも増えるといいですね。

そうですね。まずはいろんな人に知ってもらうことが一番なので、そうなれたら嬉しいです。

ふなつ先生漫画

■取材後記■

ふなつ先生は今回訪問した施設のある長崎が大好きだそうです。
「上へ上へと家屋がつづく異国情緒あふれる坂の町…海から吹く風…豊かな自然が子ども達にとっても何より良い環境なのではないか?」
そう笑顔で仰っていた姿が印象的でした。

お忙しい中、取材にご協力下さいましたふなつ先生。ありがとうございました。

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