インタビュー

第3回目はこしばてつや先生のインタビュー後編です。

こしばてつや先生

こしば先生は、2009年8月に行われたビースマイルプロジェクトの活動である、長崎の情緒障害児短期治療施設(以下、情短)の訪問にはじめて参加してくださいました。
前回に引き続き、情短を訪問した際にこしば先生が感じたことなどをインタビュー形式で掲載いたします。

photo:市川真名

与えられた愛情が強さになる

Q.前回は、体験だけではなく愛情が人間を成長させるというお話でした。
実は先生の身近にも引きこもりの方がいるそうですが

うん、そうなんだ。実際に身近で接してみて強く感じたのは、親からの愛情をいっぱいもらった子は満たされて次にいける。
でも、親からの愛情をもらっていない子は「親からの愛情が欲しい」って所で成長が止まっちゃう。
親子関係の次にある、友達、恋人、会社等へつづく社会との関係へ出ていけない。
人間って、そういう成長の階段があると思う。
親から愛情を十分にもらっていると、中学生位で「うぜぇな」とか「ほっといてくれ」と言って友達との関係をつくり始められる。
でも、親との関係をキチンとつくっていない子は、友達との関係の中に親との愛情を求めちゃうんじゃないかな。

Q.しかし、愛情と友情は違いますが。

うん。親の愛情って無償のものだから、他人からは貰えるものではないよね。
だからそれを友達に求めてしまうと、そこで信頼関係が崩れたりする。
ささいな行き違いのケンカであっても「あいつ、俺が言ったこと信用してなかった」「裏切った」「友達じゃない」と、関係を修復できないことが多いんじゃないかな。
でも、親からの愛情が満たされている子は、ケンカをしても愛情の土台という、困難を跳ね返す栄養を蓄えてる。
だから信頼関係を築いていくことができる。
俺は、人間の成長についてそう考えているから、今回の訪問の2日間、子ども達にはできるだけ愛情をもって接したかったんだよね。

Q.情短の訪問は今回が初めてということですが、施設にはどんな印象を持ちましたか?

ここの施設(大村椿の森学園)の環境はすごく良いね。
働いている職員さんや、施設の先生方も等身大の大人で嘘がないというか、志のある方が然るべき場所で働いている感じがすごく自然で。
それと職員さん、施設の先生方、取材に来ていたテレビ局の方と大勢の人がいたんだけど、…とにかく、早いんだ!

Q.早い、とは?

仲良くなるのが早いってこと!(笑)
子ども達と遊んだ後にみんなで食事をしたんだけれど、あっという間にみんな仲良くなっちゃって!
これは、子ども達との遊びを通して、自分達大人もみんな、裸というか素直な気持ちになっていたからだと思う。

Q.子どもを通して、大人同士にも良い関係が生まれたと。

そう、そこに集まった全員が子ども達を取り巻く環境や問題等を情熱いっぱいに語っていて、何だかすごく感動しちゃったんだよね。
こういう情熱に溢れた人達が、子ども達の問題に真剣に取り組まれているのなら、またこの活動に参加させてもらいたいと素直に思った。
今回の長崎訪問でお世話になった方々に、ありがとうと心から言いたいです。

Q.最後に施設の子ども達へ一言、お願いします。

俺ね、子どもの頃は変わった子どもだったのよ。
人の感情に関係なく自分の感情を他人にぶつけて。
嫌な事があるとすぐに逃げ出して…
感情のエネルギーを上手くコントロールできなかった。
でも、たまたま運良く漫画に出合って、エネルギーを漫画に向けることが出来た。
みんなにも情熱を注げる何かを見つけてほしいな。
あとは、そう…
元気に大人になって、俺の老後の介護よろしくね!(笑)
俺らの未来の笑顔はキミたちの元気にかかっているよ!!

こしば先生漫画

■取材後記■

長崎での写真を指差しながら、子ども達の名前を一人ひとり教えて下さったこしば先生。
「やっぱ、名前を覚えてあげてないとね!次、会った時にオジサン誰!?って言われないようにさ!」
嬉しそうな笑顔がとても印象的でした。

こしば先生、お忙しい中、本当にありがとうございました。

次回は週間少年マガジンで「GTO SHONAN 14DAYS」を連載中の藤沢とおる先生の予定です。
お楽しみに!

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